藤井聡太に学ぶ経営者の意思決定術〜将棋思考で「悪手」を防ぐ3つのステップ
- 成輝 川森
- 8 時間前
- 読了時間: 6分
なぜ87%の経営者が「目隠し将棋」をしているのか?
「決算書は税理士に任せている」「数字は苦手で…」――こんな言葉を、何度耳にしたことでしょうか。
ある調査によれば、日本の中小企業経営者の87%が、自社の財務状況を正確に把握していないというデータがあります。これは将棋に例えるなら、盤面を見ずに指す「目隠し将棋」のようなもの。プロ棋士でさえ困難な状況で、経営という勝負をしているのです。
一方、史上最年少で八冠を達成した藤井聡太竜王・名人は、AI評価値を活用し、1手ごとに局面を数値化して最善手を導き出します。この「見える化」の思考法は、実は経営にもそのまま応用できるのです。
本記事では、将棋の「完全情報ゲーム」の考え方を経営に取り入れ、意思決定の精度を劇的に高める方法をご紹介します。
【本論①】将棋は「完全情報ゲーム」、経営は「目隠し将棋」
完全情報ゲームとは何か?
将棋は「完全情報ゲーム」に分類されます。これは、盤上のすべての駒が見えており、相手の戦力も自分の戦力も完全に把握できる状態を意味します。
対照的に、ポーカーやマージャンは「不完全情報ゲーム」。相手の手札が見えないため、確率論や心理戦が勝敗を左右します。

では、経営はどちらでしょうか?
本来は「完全情報ゲーム」であるべきです。自社の資産、負債、売上、利益――これらはすべて財務諸表に記録されており、見ようと思えば見られる情報です。
しかし現実には、多くの経営者が「決算書を年に1回しか見ない」「専門用語が難しくて理解できない」という理由で、目隠しをしたまま経営判断をしています。これでは、偶然勝つことはあっても、再現性のある勝ち方はできません。
財務三表を「盤面」として捉える
将棋の盤面を見るように、経営者は以下の「財務三表」を常にチェックする必要があります。

貸借対照表(B/S):「駒の配置」――資産と負債のバランス
損益計算書(P/L):「戦果」――売上と利益の状況
キャッシュフロー計算書(C/F):「持ち時間」――現金の増減
これらを月次でチェックすることで、経営は「完全情報ゲーム」に近づきます。藤井竜王が1手ごとに盤面を読むように、経営者も毎月の財務状況を読む習慣が必要なのです。
【本論②】藤井聡太の「AI評価値思考」を経営に応用する
AI評価値とは?
藤井聡太竜王の強さの秘密の一つが、AI将棋ソフトを活用した研究です。AIは局面を数値化し、「この手を指すと勝率が52%から67%に上がる」といった評価を瞬時に示します。
これにより、「なんとなく良さそう」ではなく、「数値的に最善」という判断が可能になります。

経営における「評価値」=KPI
経営においても、意思決定を数値化する仕組みがあります。それがKPI(重要業績評価指標)です。
例えば:
営業利益率:業界平均5%のところ、自社は3% → 改善の余地あり
自己資本比率:30%以上が安全圏、自社は15% → 財務基盤が脆弱
売上債権回転期間:業界平均60日、自社は90日 → 回収が遅い
これらの数値を毎月モニタリングすることで、「今月の経営判断が正しかったか?」を客観的に評価できます。
「悪手」を避けるための数値基準
将棋の世界では、AI評価値が大きく下がる手を「悪手」と呼びます。経営でも同様に、数値が悪化する施策は「悪手」です。
例:
「売上は増えたが利益率が下がった」→ 薄利多売の悪手
「設備投資したが稼働率が低い」→ 過剰投資の悪手
「広告費を増やしたが顧客獲得単価が上昇」→ 非効率な悪手
KPIを設定し、月次で追跡することで、悪手を早期に発見し、軌道修正できるのです。
【本論③】将棋の格言「玉の早逃げ八手の得」を経営に活かす
格言の意味
「玉の早逃げ八手の得」とは、危険を察知したら、早めに安全地帯へ逃げることで、後々8手分の時間を稼げるという将棋の格言です。
これは、リスク管理の重要性を説いたものであり、経営における「早期警戒システム」の考え方そのものです。
経営における「早逃げ」=財務危機の予兆察知
多くの中小企業が倒産する理由は、「気づいたときには手遅れ」だからです。
例えば:
資金繰りの悪化:支払いサイトが短くなり、現金が枯渇
売掛金の増加:売上は立っているが、回収できていない
在庫の増加:売れ残りが増え、キャッシュが固定化
これらの「予兆」は、財務三表を月次でチェックしていれば、必ず見つかります。
「八手の得」=早期対策による時間的余裕
危機を早期に察知できれば、以下のような対策を余裕を持って実行できます。
銀行融資の事前相談:追い詰められてからでは借りられない
不採算事業の撤退判断:傷が浅いうちに撤退すれば損失は最小限
コスト削減の計画的実行:焦って無理なリストラをしなくて済む
財務DXによる早期警戒システムを構築することで、経営者は常に「次の一手」を考える余裕を持てるのです。
【実践】今日からできる「悪手ゼロ経営」3ステップ

ステップ1:月次決算を習慣化する(翌月15日までに確定)
まずは、毎月15日までに前月の財務三表を確定させましょう。税理士に依頼している場合、「月次決算を翌月15日までに」と明確に伝えることが重要です。
チェックポイント:
営業利益率は前月比で改善しているか?
現預金残高は最低限の安全ライン(月商の2ヶ月分)を超えているか?
売掛金の回収が遅延していないか?
ステップ2:KPIを5つに絞り、ダッシュボード化する
すべての数値を追うのは現実的ではありません。自社にとって最重要な5つのKPIを選び、月次で追跡しましょう。
推奨KPI例:
営業利益率(目標:業界平均以上)
自己資本比率(目標:30%以上)
売上債権回転期間(目標:60日以内)
労働分配率(目標:50%以下)
営業キャッシュフロー(目標:常にプラス)
これらをExcelやGoogleスプレッドシートでグラフ化し、毎月の経営会議で確認します。
ステップ3:「悪手チェックリスト」で意思決定を検証する
重要な経営判断をする前に、以下の質問を自問自答しましょう。
悪手チェックリスト:
□ この施策は、KPIのどれを改善するか?
□ 最悪のシナリオでも、会社は存続できるか?
□ 過去に似た失敗事例はないか?
□ 数値的な根拠はあるか?(勘や希望ではないか?)
□ 撤退基準(損切りライン)は明確か?
これらに「YES」と答えられなければ、その判断は「悪手」の可能性が高いです。
【まとめ】将棋思考で、経営の勝率を上げる
藤井聡太竜王の強さは、「才能」だけではありません。AI評価値という客観的指標を活用し、1手ごとに最善を追求する姿勢にあります。
経営も同じです。財務三表とKPIという「盤面」を正しく読み、数値に基づいて判断することで、再現性のある成功を手にできます。
今日からできること:
月次決算を習慣化する
5つのKPIを設定し、ダッシュボード化する
重要な判断の前に「悪手チェックリスト」を確認する
「目隠し将棋」の経営から卒業し、「完全情報ゲーム」としての経営を始めましょう。
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